薬物依存というと、「理性を失う」「意志が弱い」といったイメージを持たれることがあります。しかし私自身の経験を振り返ると、その前に少しずつ失われていったものがありました。
それは、何気ない毎日を楽しむ力です。
好きなものを食べる。映画を観て笑う。大切な人と過ごす。そんな普通の時間よりも薬物による刺激を求めるようになり、気づけば生活そのものが薬物を中心に回っていました。
「いつでもやめられる」と思っていた

ナルコノン卒業生スタッフのタコです。
薬物を使い始めた人の多くが、最初から「自分は依存する」と考えているわけではないと思います。
「その気になればいつでもやめられる」
「まだ本気でやめようとしていないだけ」
私自身もそう思っていました。
ところが、「もうやめよう」と決めたはずなのに、また使ってしまう。それを何度も繰り返しているうちに、少しずつ自分を信じられなくなっていきました。
「また約束を守れなかった」
「自分は意志の弱い人間なんじゃないか」
そんな自己否定が強くなると、今度は自分の心を守るために、「薬物はそこまで悪いものではない」「使っていても普通に生活している人はいる」と、自分にとって都合のいい情報ばかりを探すようになることもあります。
しかし、本当に苦しいのは薬物を使っていることだけではありません。
やめたい自分と、使いたい自分の間で揺れ続けること。
この状態が長く続くことそのものが、とても生きづらいのです。
最初に失われるのは日常を楽しむ力

薬物の中には、一時的に強い快感や高揚感、リラックス感などをもたらすものがあります。
その感覚を繰り返し求めるようになると、それまで楽しめていた何気ない日常が、以前ほど魅力的に感じられなくなることがあります。
好きだった趣味。
家族との食事。
友人との会話。
音楽を聴いたり、どこかへ出かけたりする時間。
以前ならそれだけで楽しかったはずなのに、「薬物があった方が楽しい」「薬物がなければ物足りない」と感じるようになっていく。
私自身、薬物をやめる前に怖かったことの一つが、
「薬物のない人生なんて、つまらないんじゃないか」
ということでした。
今考えれば、これはとても大きな変化です。
自分が薬物を使っているつもりだったのに、いつの間にか「楽しい」「安心する」「幸せ」と感じるために薬物を必要とする生活になっていたからです。
だから私は、薬物依存からの回復を、単に「薬物を我慢すること」だとは考えていません。
薬物がなくても普通に笑えて、食事がおいしくて、人と過ごす時間を楽しいと思える。そんな日常を取り戻していくことも、回復の大切な一部だと思っています。
薬物のない人生はつまらなくなかった

ナルコノンを卒業したあと、私は十数年ぶりに薬物なしでお正月を過ごしました。
それまでの私は、大型連休が近づけば事前に薬物のことを考えるような生活をしていました。薬物が手元にないこと自体が不安だったからです。
だから、久しぶりに何も使わずにお正月を過ごしたとき、
「あ、なくてもいけるんだ」
と思ったことを覚えています。
特別な出来事ではありません。
薬物を使わず、ご飯を食べて、人と話して、眠って、また朝を迎える。
かつての私にとって不安だった「薬物のない普通の生活」が、再び当たり前になっていたのです。
もちろん、薬物をやめればすぐにすべてが楽しくなるとは限りません。気力が出なかったり、何をしても楽しめなかったり、薬物を使いたい気持ちに悩まされたりすることもあります。
だからこそ、一人で抱え込まず、回復するための環境や専門的なサポートを利用することも選択肢の一つです。
私はナルコノンでの薬物リハビリを経験し、現在は卒業生スタッフとして、薬物の問題を抱える方やそのご家族と接しています。
もし今、
「薬物なしでは楽しめない」
「やめたいけれど、やめた後の人生が怖い」
「家族の薬物使用をどうしたらいいのか分からない」
と悩んでいるなら、今の状態だけを見て「もう無理だ」と決める必要はありません。
誰にでも、薬物を必要とせずに生活していた日々があったはずです。
回復とは、何か特別な人間になることではなく、薬物がなくても人生を楽しめる自分を取り戻していくことなのだと、私は自分自身の経験から感じています。
ナルコノン・ジャパンでは、ご本人だけでなく、ご家族からのご相談も受け付けています。
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