市販薬ODという言葉を耳にするようになってから、久しくなったと感じます。「OD初心者には何がいいですか？」そんなネット上でのやり取りが後を断ちません。ODが増えているというニュースが、さらに新たな依存者を生み出している側面もあります。今日はまた、市販薬ODについてお話していきましょう。
OD初心者向けのおクスリ
市販薬ODをはじめとする、若者が問題行動や犯罪に巻き込まれやすい地域の名前から、トー横キッズ（新宿東宝ビル周辺の路地裏）、グリ下キッズ（大阪の道頓堀のグリコサインの下）などという呼び名も生まれてしまいました。
そうです、彼らは市販薬ODだけでなく、他の犯罪にも巻き込まれやすいのです。そしてニュースなどでその悲惨な状況がシェアされ、それがOD”初心者”への興味を駆り立てることもあるようです。
「〇〇は飲みやすいから、初心者はコレから始めるといいよ」
そんなこと、どうか勧めないでください。あなたがその市販薬や処方薬のODを勧めて、相手がやめられなくなったり、警察に捕まるような事件を起こした時、あなたはすべての責任を取ってくれるのですか？と私は聞きたいですね。
どうやら、それはできないようですから。
直視できない現実から逃げたい…。それは、問題に出くわした時に解決する方法を知らないことを示しています。彼らの本来の姿は、やさしさや頑張りを見せる健気な若者でした。
そこに付け込んでくるのが、無責任な大人、悪い交友関係、薬物の誘いです。そして薬物とは、今や違法か合法かは関係ありません。市販薬、処方薬、アルコールだって、紛れもない「薬物」です。市販薬ODから抜け出せない人たちは、立派な薬物依存者であることを、誰もが知っているべきです。
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市販薬OD見たことありますか？と聞いてみた
以前私は、トー横でそのキッズたちを監視している警備員の方々に直接おたずねに行ったことがあります。2人の男性でした。彼らに「市販薬ODしてるとこ、見ることありますか？」と聞きました。
「あからさまに飲んでいる瞬間をみたことはないけど、やっているかもしれません」
「たまに大人が近寄っていって、処方薬のシートを渡すのを見たことがあります」
ストゼロの缶や、鏡月の瓶の一気飲みなどは、あからさまな行動なので気付けるようですが、薬をまさに摂取するところは見ていないとのことでした。それでも、昨年2023年末には、小学生2人を含む若者たちが一斉に補導され、その多くが市販薬を大量に所持していたと報道がありました。
彼らがいかに、薬物を隠れて取ろうとするかがわかる事実だと思います。人知れず、気づかれないようにODをするのです。
若者たちは主に、SNSを介して集まってきます。その多くが、家庭や学校の中でうまくいかないもどかしさを抱え、ストレスに押しつぶされそうになっています。しかし、そのストレスを解消せずして、薬がいったい何をしてくれるというのでしょうか？
市販薬ODは特効薬にならない
市販薬OD含め、いかなる薬物依存にも特効薬はありません。周囲とうまくやっていけなかったことで生み出された問題は、周囲とうまくやっていくことでしか、解決できないのですから。人間関係の悩みや、仕事でうまくいかったことのストレスを、薬物は解決してくれません。
薬物を使うことによって消えたと思った問題は、薬物の効果がなくなった後、何十倍にもなって襲ってきます。むしろ家族に隠しごとまで増え、気まずさやストレスはもれなく倍増です。
では悪い友人関係を断ち切れば、それでよいのでしょうか？
もちろん、それは必須です。しかし、よろしくない交友関係がなくなったとしても、人生の問題に出くわしたときに乗り越える力がなければ、自分の心の弱さや逃げたい気持ちに向き合うことができなければ、結局は罠が待ち受けているものです。
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